事故と桜と良い写真

桜満開の昼下がり
一年で一番の花見日和


京都で最も人が集まる四条通の繁華街で
前代未聞の大事故が起きた


車はタクシーに追突した後
四条通を南から北へ突き抜け
青信号を渡ろうとした観光客達を次々と跳ね
最後に電柱に追突し止まった


車の運転手含め現在8人の死者と
10人以上の怪我人が出た


いかなる理由であれ
これだけの被害者を出したのに
生きて責任を問われることなく死んだ犯人を
心から嫌悪した


しかしその後のテレビ等の取材で
犯人の姉が
犯人はてんかん持ちで
以前からふと意識を失う症状があったから
車の運転をやめるように説得していた
全て私たち家族の責任です
と言っていた


犯人を知っている人たちは口々に
おとなしくて優しい人だった


と言っていた


真相が明らかになることはないかもしれないが


犯人は本当に心優しい人間で
知らない人を殺す気なんて毛頭なく
もしかしたら事故を起こす瞬間に意識が朦朧として
消えそうな意識の中で人々を跳ねてしまっていたとしたら


そんなことを考えたら


……


しかし


理由はどうあれ


7人もの命を奪ってしまったことに
許される理由などどこにもない




そんなお花見日和に僕は自転車で鴨川をひたすら下り
写真を撮りまくった


中欧米人の女性が目に留まり
その手前で自転車を降り


しばらくまわりをうろうろと撮っていた


女性は桜の根元に座り
とても可愛らしいピンク色の民族衣装のスカートをはいていた
その脇には旦那さんと思われる男性が
彼女を包むように寝転がっていた


僕はちらりちらりと二人の方を見ながらうろうろ


どうしても彼女達が撮りたかった
こんな素敵なシッチュエーションを
一瞬カメラを向けてこそこそ撮ったって
うまく撮れる訳はなかった


すぐに決心し
女性の元へ歩み寄り


「Excuseme. Can I take your photo?」


と問いかけると一瞬ためらい


「For us?」


と言われたので


「Yes」


と言うと
男性が目を覚ました


彼女が軽く説明するとまたすぐに男性は眠りの中へ


女性が「ok」と言ってくれたので
すぐにシャッターを切った


今までの経験上
焦って2、3枚撮って終わると
後で見返した時にたいていピントが甘かったり
変な所で切れたりしてしまうので
少し余裕を持って撮った


日本人を撮るといつも恥ずかしがって表情が固まってしまうが
こういうとき欧米人は
遠くを見る表情をしてくれたり
男性を見たり
胸に抱いた赤ちゃんを優しく見守る表情をしたり
とてもサービスをしてくれる


これまた日本人とは違い欧米人だと
なんかカッコ付けずに向き合えるので
とても撮りやすかった


日本人相手だと何か
写真を撮らせてほしいという問いかけ自体
カッコ付けてる気がしてしまう…


最近は旅館に泊まりにくる外人と接するのもとても楽しい


やっぱりゲストハウスをやって
いろんな国の人といっぱい話しをしてみたい